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WILD HYBRID

40歳から第2章の人生をスタートしたGID(FtM)の航海日誌 

2024/09/19  [PR]

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  • :2024/09/19/23:42

2012/12/02  ホル注変化 肉体編6【声】

僕に限らないと思うが、声の変化はかなり求めていた変化の一つだ。
まだホルモン治療というものを知らなかった頃、初めて友人にそういう治療法があることを教えてもらい、多少なりとも声が変化する可能性があると知って心の底から希望を持った。
知るまでは、それだけはどうにもならないものだと思っていた。
僕がホルモン治療を望んだ3大理由に入るかな。
モミアゲに並んで(笑)。

声に関しては、調べてみるとやはりホルモン投与の効果である以上、年齢がいってると若い人ほどの変化は望めない可能性があることも分かってきた。
カウンセリングの際にも、そういった可能性については先生に聞かされたしね。
現実を知って凹みはしたが、それでもやっぱりダメもとの覚悟で可能性に賭けてみたいと決めた。
まぁ・・・正直あんまり期待してなかったけど。

声って、パス度の中でかなり重要なファクターで・・・悩んでる人も多いと思う。
見た目がある程度パスしてたとしても、声出した瞬間に「あれっ?」って顔されたりもする。
そういうリアクションに何度も遭遇するうちに、そう思ってんだろうなっていう被害妄想にも陥って、だんだん声を出すのが苦痛になってくる(僕だけ?)。
ホル前の僕は、買い物とかレンタルショップとか、とにかく日常のあらゆる場面で、他人に一言でも声を発するのが嫌だった。
勿論知り合いとは話せたけど、例えば携帯やSkypeで、たまたま自分の声がエコーで聞こえてきちゃった時なんかも激しい嫌悪感に襲われた。
今から考えると、もうノイローゼに近かったのかもしれない。

僕はそれでもそんなに高い声じゃなかった。
女性というには低く、男性というには高いという感じの声。
だけど、声を聞いた相手には十中八九女性と判断された。
若い頃女性~中性くらいの恰好(服装)をしていた頃はそれでも(心の問題は別として)生活に問題はなかったが、いい年になってきた上にあからさまな男性の恰好をしていると、多少のパス度があったがために(まして肌焼いてパス度は多少上がっていたので)、なおさら声を出した瞬間の相手のリアクションがキツかった。

思うに、男性と女性の声の違いは、単に高さだけではないと思う。
音質のレンジというか、そういうものが根本的に違う気がする。
それはやはり声帯や咽頭周辺の骨の形状などが影響するんじゃないだろうか。
僕はいくら低く声を出しても、男性と思われることはまずなかった。

何度かお勧めしている『ホルモンテキスト』のページに、男性ホルモンの変化ということで下記のような記述がある。

咽頭の軟骨(甲状軟骨)の肥大化による、声の低音化。いわゆる、声変わりがおこります。声変わりが落ちつくまでには、半年から2年くらいかかります。その間は声が出しづらかったり、歌が歌いづらくなります。

前回のホル注変化で喉仏について触れたけど、これを読む限りやっぱり気のせいじゃなく、本当に多少なりとも変化があったのかもしれない。
ホルモン注射を始めて、確かに声は変わった。
年齢的に考えてあまり期待してなかった僕からすれば、それは充分な変化だった。

とはいっても、打ってすぐに変わったわけじゃない。
多少の変化が出始めたのは2~3ヶ月以内くらいだったと思うが(このブログの初期を読まないと思い出せない)、今くらいの状態に落ち着くまでには確かに2年程度かかった。
その間、いずれも極端ではなかったが、心もちハスキーな日があったり、野太くなる日があったり、そうかと思えば戻ったように感じる日があったりと、不安定で落ち着かなかった。
また、その不安定の波がホルモン注射のサイクルと一致しているかというと、必ずしもそうでない時もあったから戸惑った(要するに、“注射後しばらくは声が太くなったりハスキーになったりして、日が経つに連れて戻ってしまう”・・・というわけでもなかった)。
そんな、日によったバラつきが月日が経つにつれて徐々に安定していき、2年を過ぎた頃からはいつの間にか気にならなくなった。
いよいよ落ち着いたのは、やはりここ1年ぐらい・・・つまりはホル開始後2年といったところだろうか。

男女の声の違いについて、先ほど「レンジが違うのではないか」と書いた。
それについて調べてみたのだが、興味深い情報を見つけた。
美紀さんというMtFの方のWEBサイト『Miki's T Room』の『T's Room』というページでは、トランスジェンダーに役立つ健康関連情報などがいくつか詳細に載っている。
その中の『女声を得る』というページに、『男女の声の違い』が詳しく解説されている。
ここに丸ごと転載は出来ないので、声の仕組みや違いを知りたい方は、ぜひとも上記ページを読んでみて下さい。
MtFさん側のお話は、FtMにとっても逆で考えれば非常に参考になります。

さて、違いとして、まず、成人男女の声帯の長さの違い。
平均値ではあるが、女性11~17mmに対し、男性は17~23.5mmとのことで、これにより発する声の基本周波数にも違いが生じてくる。
そして、それに伴って基本周波数の違い。
成人男女の平均的な声の周波数と音程(()内)は、男性 60Hz(C2)~500Hz(C5)に対し、女性128Hz(C3)~800Hz(G5)とのことで、やはり男女で明確な違いがあることが分かる(ちなみに人間が聞き取ることのできるのはおおよそ20Hz~20000Hz)。

また、Wikiの『変声』項目には下記のようにも説明されている。

男声と女声の違いは、ほとんどが声種の違いによるものである。変声期以前は男女とも頭声主体で発声する人が大半だが、男性の場合は第二次性徴期に声帯周辺の筋群の均衡が急変し、胸声主体の発声を強いられることになる。これが変声と呼ばれるものである。1オクターブ下がるといわれるのは頭声と胸声の音域の差である。
変声の初期において、発声者は習慣的に頭声発声をしようとするから発声は不安定なものとなり調子外れな声を出すことになる。多くの場合、これを嫌って頭声をほとんど使わない発声へ移行する。一方、変声がゆっくり進行する場合や発声者が脱調をいとわない場合などでは、頭声の要素が多く残ることがある。この場合、声変わりしたことを本人が自覚しないことがあり、女性のように高い音域を維持することが多い。また、ややノイジーな声になることも多い。
逆に女性や小児であっても胸声発声が習慣付く人も存在する。この場合は成人男性に近い音域になる。特に日本人は女声の胸声発声を嫌う傾向が欧米より強いようで、だみ声とか悪声などと言われ敬遠される風潮があったが、最近では落ち着いた深みのある声としてむしろ好む傾向も生まれていて、価値観が多様化しているところである。
女性や小児の声が少しずつ低くなっていると言われるのは、胸声発声する子供や女性が増えているために平均値が下がっていることを意味する。


つまり、違いは必ずしも声の高さだけではなく、発声法、その他にも話し方など、声の高低そのもの以外の違いによる部分も大きいということだ。
自分の声は、自分が一番付き合いが長い。
ずっと聞いてるから変わってもかえって分かりにくいし、まして声質自体が変わるわけではないから、尚更効果を実感できない場合もある。
それでも、ホルを打つことによって多少なりとも甲状軟骨などは変化し、数年かけて男性寄りの声が出しやすい条件になっていくわけだから、焦って落胆せず、その間は声そのものよりも発声法の工夫、男性としての自然な話し方を身につけていったらいいんじゃないかと思う。

僕の場合、確かに声は変わったと思うし、それによってパス度も上がった。
が、しかし、それがどの程度なのかということに関しては自分でもピンときていない。
自分自身は元の声を知ってるだけに、変化したのは分かっても、それほど大きくは『男性らしい声に変化した』という実感や自覚がない。

とはいえ、これ以上はほとんど変わることはないだろうし、現在の声がどう聞こえるか、どう思われるかは聞く人それぞれだろうから、気にするのは極力やめたし、パス度が徐々に上がってくるのと並行して気にならなくもなった。
以前、他人に声を発するのが苦痛で、買い物や電話の問い合わせもままならなかった・・・というあのノイローゼ気味だった頃に比べたら、今は随分垣根が取っ払われて過ごしやすくなり、声に関してはストレスのほとんどない生活ができていると思う。

ただ、その反面、声が変わるにあたり、失ったもの、不便になったこともいくつかあった。
今まで歌えていた曲(特にハイトーン部分)が歌えなくなった。
女性の曲ではなく、男性の曲である。
おそらく高音の声域が狭まったんだと思う(低音域は増えたと思うが)。
声(声帯?)が弱くなり、声枯れ知らずだった自分がすぐ声枯れしてしまうようになり、声量も出なくなった。
低くなったせいもあり、以前うるさいとまで言われた声は、聞き返されることが増えた。
そんなにハスキーでもないと思うのだが、特ににぎやかな場所ではかなり声が通らなくなってしまった。
戸籍変更していない以上、行政的な扱いは女性のため、女性で通ってくれないと面倒な場面(役所関係への電話など)があるのだが、今はいちいちカミングアウトしないと不審者に思われる(笑)。

それでも、僕は現段階でほぼ満足している。
何かを得たいと思ったら、代わりに失うものが発生するのは仕方のないこと。
他人(特にその場限りの他人)は僕が思うほど僕のことを気にしてはいないだろうから、これはただの自己満足なのかもしれないけど・・・まずは多少なりとも自分が充実しなくては生きてて楽しくないわけだから、日常生活に於いて気後れなく過ごせるようになったことは本当によかったと思ってる(勿論増えた不便もあるけど)。

そういう意味で、ホルモン治療というものは、僕の体に変化をもたらしてくれるよりも、心に変化をもたらしてくれたのかもしれない。

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