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WILD HYBRID

40歳から第2章の人生をスタートしたGID(FtM)の航海日誌 

2024/09/22  [PR]

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  • :2024/09/22/05:25

2010/09/28  ホルモン注射23回目

エナルモンデポー250mgを左ケツに注射。

5度目の250mg。
3週ペースにしてからは2本目。

正直なところ、身体に負担さえなければ、手間としては2週ペースより3週の方がずっと楽だ。
通院回数も交通費も抑えられる(注射代はかかるが)。
しかし、身体の方はどうかと言うと、血液検査の結果だけでなく、自覚症状のある副作用もやはり強くなってきている。

しかしまぁ2週半に1度というペースの時の方が如実にしんどかったが、3週に1度でも、2週に125mgの時よりは多少きつい。
いわゆる更年期障害症状・・・例えば、頭の鬱血感とか、心臓の動機などだ。
不快な副作用だけでなく、望んだ副作用も(ホルモン量を)増やしたなりに多少の効果はあるのだが、どちらかと言うとしんどい副作用の方が強い気がするのは、単に年のせいだろうか(笑)。
何よりも、目に見えない、自覚も少ない血液状態のよくない変化が、一番物語っている。
これは自分ではっきりと自覚できないだけに怖い。

医師からは、水分をよく摂ってくださいと言われた。
あの血液の状態は、分かりやすく言えば脱水症状に近い、嫌な言い方をすればドロドロ血液なのだ。
そうなってくると血栓のリスクが高まる。
つまりどういうことかと言うと、脳や心臓で血管が詰まるリスクが高まる。
脳であれば脳梗塞や脳出血、心臓であれば心筋梗塞などになる可能性が高まり、命にかかわる状態に一歩近づいたわけだ。
おまけに、かつて母も脳出血で倒れたことがあり、血統という折り紙付きだ。
重々気をつけねばならない。

ただ、不幸中の幸いなのは、量を増やして以来、あれだけ不快だった不正出血が止まってくれたことだ。
ホルモンバランスに起因した子宮からの出血は、嬉しいことにぴたりと止まったまま、再発はしていない。
不意の出血がないということがこれほど心も身体も楽なことだとは・・・。
変かもしれないが、僕としては、ホルモン投与して一番嬉しかったのは男性的な変化ではなく、この出血とのオサラバだったかもしれない。

さて、実は今日は、産婦人科だけでなく整形外科と皮膚科にも行った。

皮膚科は、悩ましいニキビ(吹き出物?)の件だ。
打ち始めの頃はあまり出なかったニキビも、経過と共に徐々に出るようになり、特に量を増やしてからは背中・肩・腕にひどくできるようになった。
特に背中に関しては手が届かないのでどうしようもない。
定価だと2300円ぐらいする殺菌用のボディソープを買って身体を洗うようになってからは多少マシになったものの、やはり注射のサイクルに合わせて増減し、時には悪化して化膿する。
最近は皮膚科にニキビ専用の治療薬があるとテレビで見たので、ついでだし受診してみることにした。

以前、婦人科で出た塗り薬はゲンタシン軟膏という殺菌剤(?)。
今回はダラシンTゲルという抗生物質製剤。
ジェルだからゲンタシンのようにベタつかず、塗りやすい。
しかし・・・背中に塗るのは至難の業だ(汗)。
本当は飲み薬もあるらしいが、やはり身体への負担は否めないので、僕ぐらいの(ニキビの)レベルであれば、なんとか塗り薬で対処したほうがいいとのことだった。

次は整形外科だが・・・実は、数ヶ月前から膝と手首の調子が悪い。
手首は、寝起きなどに痺れが出るようになった。
薬指の内側から親指までの指先だ。
当初、脳だとヤバイと思い、近所の整形外科に行ってみたんだが、神経の圧迫だろうということだった。
膝は、坂道など、負荷が増したところを歩いていると、妙にデカイ音が鳴るようになった。
ネットで調べても、膝が鳴るのはあまり心配いらないと書いてあったので、さほど気にしてなかったのだが、最近は普通に歩いていても鳴るようになり、多く歩いた日は若干の痛みも伴うようになってきた。
さすがに、いくら心配ないと言われても気になる。

そういう訳で整形外科へ行き、レントゲンも撮ってもらったものの、特に異常なし。
医者も、気にする必要はないという。
痛みが出たら休んで、出来れば負荷のかからない方法で、膝を補助する筋肉を鍛えましょうという話になった。

まぁ確かに病気や怪我じゃない以上、そうするしかないんだろうし、整形外科だから治すために切るか、ギブスをするか、その両方の必要がないものに関しては湿布貼って様子見しかないんだろうとは思ってたけどね・・・。

そんなこんなで、本日の医療費、婦人科で注射代(自費)+医師の診察料(保険適用)で4240円、皮膚科(保険適用)で610円、整形外科(保険適用)で1050円の、合計5900円也。

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2010/09/20  ホルモン治療11ヶ月目

ホルモン投与を始めて11ヶ月目。
最近変化の自覚がないので、だんだん報告することも少なくなってきたなぁ・・・(汗)。

おおよそ現状維持期に入ってきたかな?

もちろん、微妙に変化し続けてはいるんだと思う。
ヒゲやモミアゲ、体毛の本数とか濃さとか。
ただ、その微妙な変化を文字で表現するのはちょっとムリだ(笑)。

とりあえず言えることは、自分では(特に顔が女顔なので)それほど見た目男っぽいとは思えないわりに、パス度がかなり高くなったこと。
人が内心どう見てるのか分からないので完パスとまでは言っていいのか分からないが、コンビニのレジではほぼ90%、迷わず男性ボタンを押されるようになった(残り10%は若干迷ってから男性ボタン)。
この流れで、トイレももう女性用には入れる気がしないし、女湯も厳しいかも(オペしてないので脱げばなんとかなるか?)。

余談だが、この間なんか、メンドくさかったので近所のコンビニまでTシャツにノーナベシャツ(いわゆるノーブラ)の状態で買い物に行ったら、胸のラインがバレバレだったにも関わらず、迷った後に男ボタンを押された(笑)。
店員さん、紛らわしくてすいません。

そんな感じで、ほぼパスが嬉しくもあるが、困ることもある。
女として存在しなければならない場面、戸籍上の男女が問われる場面では、周囲に困惑されることだ。

例えば、僕は母が施設にいて、母の役所の手続きなどは全て僕が管理している。
施設や役所の人は僕が母の「娘」だと(書面上で)認識している。
だから、電話をかけたり、出向かなきゃならない時には困る。
まだ少し前は「男っぽい娘さん」「男か女か分からん人」でなんとかしのいできたが、さすがにここまでパス度が上がるといちいちカミングアウトしないと話が先に進まないのかなぁ、などとも思う。

また、例えば、病院など、戸籍上の性別が(保険証などで)明らかにされる場所では、本人と認識されないこともあり、やはりいちいちカミングアウトしなければならない。
銀行で身分証出して何か手続きする時とか、加入中の保険の問い合わせで電話した際とか、レンタルショップで会員証作る時とか・・・意外とそういう場面はあったりする(性別を見落とされてノーリアクションで済む場合もあるが)。

僕の場合、別にカミングアウトすることに抵抗はないのだが、その都度驚かれたり気を遣われたりするのが面倒というのは正直ある。
世のGIDが戸籍を変更したくなる気持ちも、だんだん分かってきた(ソレだけが理由ではないだろうが)。

それでもまぁ、もちろん気が楽になったことは多々ある。
声のパス度が結構上がったので、話すのが苦ではなくなったこと。
コンビニや店で何かを注文する時も、苦痛に感じなくて済むようになった。
ネットで買い物をすることが多く、通称名で男の名前を使っても声とのギャップがあるので問い合わせの電話がイヤだったりしたのだが、そういったこともなくなった。

困ること、だけど便利なことは、ホルモンを打つ前にも後にもそれぞれあった。
男の心のパーセンテージが多いのに、身体と戸籍は女性であること。
男の心のパーセンテージが多く、そこそこ男に見えるのに、戸籍上は女性であること。
ただ、どちらが、より生きやすいのかと言われたら、僕の場合は迷わず後者だ。

生きやすく、ストレスも減ったから、付随する不便や困ることもさほど苦痛に感じない。
社会的には、おそらく前者でいた方が生きやすいんだろうと思う。
心の内のストレスや葛藤を抜いて考えれば、「普通」に紛れ込める。
後者になると、ある意味カミングアウトして歩いてるのと近い状態になるから、周囲に驚かれたり困惑されたり、場合によっては差別されたりもする。
しかし、それでも、自分の心が楽になれるなら、それを撥ねつけるだけの気力を持つこともできる。
その差はでかいんじゃないかな。

但し、逆に、その気力が持てないような気がするのであれば、前者のまま生きた方が後悔をしないんじゃないかと、僕は思う。

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2010/09/07  ホルモン注射22回目

エナルモンデポー250mgを右ケツに注射。

4度目の250mg。
2週間半のショートスパンは前回まで。
曜日のズレも修正できたので、今回からは3週毎で打っていく予定だ。
この3週毎250mgというペースが、比較的最も多いパターンらしい。
但し、もちろんそれで身体が耐えられるかどうかというのは、個人差があるので、必ずしも万人にベターとは限らない。

僕個人としては、元々血液が多血症気味ということもあるので、あまりいいペースとは思えない。
しかし、不正出血を抑えるためにやむを得ず選択した。
幸い、現在ほぼ出血は止まったままだ。
身体のことを考えたら、この状態をしばらく維持した後、また2週毎125mgに戻せれば戻したい。

案の定、血液検査の結果は、あまりよくはなかった。

いつも主に見ている項目は、血色素量とヘマトクリットの値。
男女で基準値が違い、どちらも女性より男性の値の基準地の方が高い。
血色素量は、女性基準値が11.3〜15.2g/dl、男性基準値が13.5〜17.6g/dl。
ヘマトクリットは、女性基準値が33.4〜44.9%、男性基準値が39.8〜51.8%。
この両方の値が、僕の場合、ホルモン投与前から女性にしては高めで、2008年12月の時点で血色素量14.5g/dl、ヘマトクリット46.1%だった。

その後ホルモン投与を始めて、更に値が上がり出し、7月の血液検査では血色素量16.2g/dl&ヘマトクリット51.0%、8月の今回は血色素量16.7g/dl&ヘマトクリット50.1%だった。
7月に比べれば8月の方が(ヘマトクリットは)若干下がっているが、50%を超えるともはや男性の基準地と比べても高い。
50%を超えると即危険ということでもないのだが、いずれにしても50%という数値を超えないようにするのがある種の目安だと医師は言った。

とにかく、出血があろうがなんだろうが、身体のことを考えたらこれ以上ホルモンは増やせない。
まぁ2週間半毎から3週間ごとに減らせば多少は変わってくるかもしれないが、なんせ2週間125mgから増やしたのだから、それぐらいじゃ大幅には減らないだろう。
その他にも、以前に比べたらコレステロール値も多少増えてきているし、いずれは元のペースに戻して改善を図るしかない。

それにしても、これだけ血液が男性寄りになってる割に、エストラジオルが毎回しっかり50pg/ml出てるのには参る。
もちろん女性の正常値と比較したらそこそこ低くはあるのだが、以前不正出血で悩んでいた頃はホルモン投与前なのにも関わらず20〜27pg/mlという数値だったから、どうにも抑えられてるという実感が湧かない。
ホル前の方が低いってどーゆーことよ?

まぁとりあえず、現在の投与間隔を年内いっぱい維持し、年内にもう一度血液検査を受け、多少なりとも数値が下がってきたらとりあえずこのまま、もし数値が変わらないor上がっているようだったら来年以降2週間125mgに減らし、様子を見たいと思っている。

本日の医療費は、注射代(自費)3200円也。

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2010/08/20  ホルモン治療10ヶ月目

ホルモン投与を始めて10ヶ月目。
変化が止まったワケではないのだが、変化することに慣れてあまり意識しなくなったせいか、自分ではあまり変化が分からなくなってきた。

声も低いままだいぶ落ち着いてきたと思う。
ただ、自分で聞く声と人の聞く声とでは、骨伝道がある分若干違うらしい。
友人に言わせると、僕の声は、僕が思うよりややハスキーなんだそうだ。
以前に比べて声がかなり低くなった分、多少小さくもなった、と言われた。
おそらく声変わりでかすれてるせいもあるのだろうと思う。
これが落ち着いたらそこそこの声量に戻るのか、このままなのか、今のところ不明だ。

地味〜ぃにヒゲも増えてきているらしい。
鼻の下のヒゲの細さは相変わらずだが、毛量は増えたように思う。
顎の方が硬い毛質で、伸びる速度も1〜2日でザラついてくる感じ。
微妙に毛量も増えてるらしく、範囲が広がった気がする。

その他に、口の真横の方、頬に近いところにも数本ヒゲが生えてきた。
細くてホトンド分からないものの、コレが増えるとおそらく口ヒゲと顎ヒゲを繋ぐヒゲになるんじゃなかろうか。
まぁそこまで生える日はいつのことやら・・・。
今のところはねずみ男か猫娘かといった笑えるヒゲなので、伸びてきたら切っている。

また、頬から顎のエラ周辺にも産毛が密集して生えている。
触った感触はまさに産毛のような柔らかさだが、毛量が増え、着実に濃くなってきている。
ここが濃くなると、モミアゲから顎にかけてのヒゲが繋がるので嬉しい。
しかしまだまだ道のりは遠いと思われる・・・(つか、そこまでヒゲらしくなるかも怪しい)。

それと、髪は全体的にほぼクセ毛になった。
先日数ヶ月ぶりに美容院に行き、いつもの美容師さんに驚かれた。
「髪質かなり変わりましたね〜(汗)」
クセ毛になっただけでなく、髪質そのものが変わったらしい。
確かに、自分で触ってもゴワっとした感触がある。
「まだ(ハゲ)大丈夫そうっすか?」
と、恐る恐る聞いたら、神妙な顔でまじまじと髪をいじりながら
「とりあえずまだコシがなくなったり細くなったりはしてないですね、むしろ・・・コシが強くなって硬くなったかな」
と言われたので、ホッとした。
クセ毛については、
「これぐらいだといい感じで動きが出せますよ」
と言われて喜んだのだが、ボソッと
「・・・これぐらいで(クセが)止まってくれればいいんですけどね」
と不吉なことを言われてビビった。
確かに、この先どうなるかはまだ分からない。
「もしやアフロに・・・」
いや、それはないって(笑)。・・・多分。

どうしても毛に関しての記述が増えてしまうが、スネ毛、腿毛もだいぶ増えてきた。
とりわけ腿毛に関しては、短いが全体的に濃くなってきた感じがする。
ただ、それでもまだ男然としたハッキリ濃い毛ではない。
夏だと男性も短パンで歩いてるから、それらの足の毛と比べたら、ほとんど目立たないレベルだ。
まぁこれはあえてそんなに濃くならなくても、自分的には問題無い。

筋力・筋量は以前に比べて明らかに増えたと思う。
肩の三角筋(だっけ?)が前よりやや大きくなって、力を入れると筋が入るようになった。
腿も、もともと筋量はあり、硬かったのだが、それが増した感じがする。
おおよそ胴回り以外の部分の体脂肪は、以前にも増して減ったんじゃないかな。

それと平行して、体重も増えた。
今まで体重計乗るのをついつい避けてたのだが、先日思い切って乗ってみたら、8kgぐらい増えていた。
その8kg全てが筋肉ではないことは分かっているが(汗)、脂肪だけでもないと思う。
なので、「体重の増加=太った」と、僕は考えていない。
まぁもちろん多少は「太った」気もしているが・・・。

気がつけば、脂肪のつき方が変わっていた。
特に胴回り。
以前は女性らしく、腹より下腹部、骨盤周辺に脂肪がついていたが、今は下腹部より腹に脂肪が移動(?)している。
もしかすると内臓脂肪もついてきているのかもしれない。
この辺は筋トレなんかじゃ落とすことは出来ないので、地道に有酸素運動で落としていかないとメタボになるな。

ここしばらく、一時的ではあっても過密にホルモンを投与したため、副作用もわりと出ている。
身体も、伸びをするとアチコチ攣りそうになる。
先日なんかこむら返りになってえらい目に遭った(涙)。

あとは、ニキビ。
こいつはとにかくどうしようもない。
皮膚科に行けば少しはマシに治療してもらえるのだろうが、なかなか行く時間がない。
あれこれ試してはみたが、著しく効果のあるものはなく、とにかくマメにやさしく洗うことに尽きる。
とりあえず、少々値が張るが、殺菌消毒効果のある薬用ボディソープで洗い始めてからは、それでも多少数は減ったし、化膿することも少なくなった。
一番出るのは、僕の場合、背中、肩、胸の順。
肩から腕の背中側にかけても少々出ている。
たまにお尻に出たり、腿にまで出来てたりもする。
顔はとにかくこまめに洗顔することで、なんとかごくたま〜に出来るレベルに抑えられている。

変化と同時にパス度も上がり、「どっからどう見ても男」というレベルほどではないが、「男として人前で振舞ってもそんなには不審に思われない」レベルぐらいにはなった気がする。
そのお陰で、日常の些細なことに対して気がラクになったし、自然に男名(通称名)も使えるようになった。
以前とても苦痛に感じていた「コンビニでタバコを買う」という行為も、ストレスに感じなくなった(と言うよりもタバコをやめねば・・・)。

ネットで拝見していると、もはや男にしか見えないぐらいの身体や、ヒゲをたくわえたFtMの方がいて、羨ましくは思うが、自分は治療を始めた年齢も遅いし、そこまでは無理だろうと思っている。
それでも、以前に比べれば、社会的にというよりは自分の気持ちの上で、随分自由に生きられるようになった。
この先、何をどこまで・・・という具体的な計画はまだ立てていないが、身体に過負荷を強いないレベルで、自分の生きやすい道を選択して行けたらと思う。
生きてくための治療で死に急いじゃ、全然意味がないからね。

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2010/08/19  男友達

僕には長年の付き合いになる男の友人がいる。
もう20年ぐらいになるだろうか。
彼はもちろん僕の女性時代もよく知っている。
つか、女性時代での付き合いの方が長い。

なぜなら、僕は41年の人生で、37ぐらいまでを女性として生きていたからだ。
とは言っても、判別不能な(男性化した)感じで生きていた年月も半分近くあるので、まるっきり女性だったわけでもないけど。

いずれにしても、その友人は僕にとって最古の旧友で、かつては恋人でもあった。
いわゆる「元カレ」ってやつだ。
まぁそんな甘い言葉が似合う関係は、当然のことながらもはやお互い心身共に微塵も無いが。

しかし、男女の関係に限らず、そういった個々の人間関係の感覚は、当事者にしか分からない。
事実上の関係だけを言葉にすると、多くの人は首を傾げる。

例えばの話、世間一般的に「肉親であれば愛情があり仲が良いはず」という認識があっても、全ての家族がそうであるとは限らない。
他人以上に疎遠な関係もあれば、憎み合っている関係すらある。
様々な経緯があって、当事者にとってはそれが自然な流れに沿った感情であっても、他人は自分に置き換えて考えようとするのでさっぱり理解できない・・・そんなこともある。

だからそもそも人間関係というものを理解しようとすること自体に無理があるのだが、人はついついそういったことに好奇心を抱き、聞き出して自分に置き換えて考えたがる。

僕の旧友が僕に対してどういう感情を持っているか、僕は知らない。
そんなこと分かるさ、なんて言う方がよっぽどウソ臭いし、おこがましいだろう。
どんなに親しくとも、人の心の奥底まで、人が分かるわけはないのだ。
ただ、長年付き合い、かつては夫婦同然に一緒に暮らした仲だから、ある種の情は存在すると思う。
僕はけしてダナーズではないが、彼に対する情は確かに僕の中にある。
あえて言うなら、僕にとっては家族みたいなもんだ。
向こうもいろいろと僕を心配したり世話を焼いたりしてくれるから、似たような感情なのかもしれない。
ただ、明らかに男が女を心配したり、男が女に世話を焼くような形のものではないけれど(かと言ってまるっきり男扱いをされてるというわけでもないが)。

彼は僕より上の45で、独身(ちなみにノンケ)。
彼は仕事面及び収入がしっかりしている、僕はその点は彼に比べてかなり心もとない。
その代り僕は日常生活に於いて収入面以外はしっかりしている、彼はそこがかなり抜けている。
それぞれお互いこの先結婚ももうないだろうし、いつ孤独死してもおかしくない環境と年だから(笑)、わりと頻繁に連絡を取り合い、弱点をフォローし合い、助け合い、気にし合いながら日々を過ごしている。
彼とは趣味が共通していて、とりわけ冬の時期は週末を一緒に過ごすことがほとんどなので、送り迎えも面倒だし時間もロスするから合理的にルームシェアでもしようかなんて話も出ている。

FtMの僕にそんな家族同然の男仲間がいると話すと、多くの人は不思議に思うらしく、8〜9割方言われる言葉がある(主に女性に言われる)。
「相手の人(男友達)、心の広い人だね〜」、若しくは「やさしい人だね〜」、「器の広い人だね〜」等々。

親しい友人を褒められれば、僕だって嬉しいし誇らしい気分にはなる。
が、しかし。
ひねくれている僕はふと思うのだ。
その言葉の続きには、無意識に何が含まれてるんだろう、と。
例えば、「彼女でもない相手に」とか、「身体の関係もないのに」等々(実際そう言われたこともある)。
まぁ確かにそれも事実だし、一理あるんだけどさぁ・・・。
でもそれって平たく言えば、卑屈だけど、「(俺が)GIDなのに」っていうことだろ?

何?ソレ
ってことは、何、俺、「お友達になって頂いてる」わけ?
そうでもなきゃこういう関係はあり得ないってこと?
肉体関係が(生物学的に)可能な人間同士は、肉体関係を有さないと助け合うはずがないって意味?
むしろそんなこと言うヤツの方が、「身体提供すれば面倒見てもらって当たり前」って思ってんじゃないの?

僕らGIDに、ある意味「同性」はいない(というのが僕の考えだ)。
強いて言うなら、FtMにとってはFtMが、MtFにとってはMtFが、唯一の同性だ。
その人の性自認によって千差万別だが、一般社会の男女別で考えると、大雑把に分けてしまえば、肉体上の同性は精神上で異性になり、精神上の同性は肉体上だと異性になる。

ってことは、異性間の友情が成立しないと考えるならば、FtMはFtMとしか友達になれないって話になる。
しかし、僕にはむしろGIDの友達がいない。
友人はある意味、みんな「異性」だ。
ホルモン投与して性欲だけは男並みの僕でも、女性と友達になれないわけじゃない。
性欲が強いからと言って、女と見れば片っぱしからセックスの対象になるわけでもない。
相手に魅力がないというわけじゃなく、魅力があっても友人であることが一番いい関係であると判断すれば、それを維持することはできる。
人間の魅力は、何もセックスアピールだけではない。
「友達になってやるよ」としか思えないような人間とは、そもそも付き合い自体しない。
誰だってそうだろ?僕だけ?

僕の男友達のことを「心の広い人だね〜」と言った人は(悪意のないことは分かっちゃいるが)、男友達側だけが譲歩やガマンをしてGIDの僕と友人になってくれている、と根底では思っているんじゃないだろうか。
発想というものは、無意識に出るその人の根本的な考え方の写し鏡でもある。
もしかすると、それを言った人自身が、自分がもし彼だったら僕と「友達になってやる」という感覚を持っているのか、若しくは異性との友達関係自体持てない人なのかもしれない。

確かに、男友達が譲歩してくれてる部分もあると思う。
その譲歩の部分の中に僕とヤツの場合は「GIDである」という要素も含まれているだろう。
女性時代を知ってるだけに、変に気を遣わせている部分もあれば、戸惑わせてしまっている部分も多分にあると思う。
そこは間違いじゃない。
自分でもそこは申し訳なく、心苦しく思っている、僕の弱みだ。
だが、男女抜きで、人間関係で考えれば、僕だって彼に対して譲歩もしているしガマンしている時もある。
そこに「GIDである」という要素がないだけだ。
それでもなお且つ、互いが互いを大事に思ってるから、性欲を満たすというメリットがなくても友人関係が続けられるのではないか。
そうでなきゃ、単純に、友人関係や家族愛ってものそのものが成立しなくなるんじゃないの。

・・・なんて長々と屁理屈を書いたけど、結局、卑屈に解釈しすぎてるだけなんだろうなぁ(笑)。

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